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自己臭恐怖、多汗恐怖の療法

第8症 自己臭恐怖、多汗恐怖の療法

■自己臭恐怖は手術では治せません
体臭が気になって来院する患者さんの中には、
診察室に入るなり強烈なニオイを発する
ワキガ体質の人から、
鼻をいくら脇の下に近づけても一向に
におわない人まで、
実にバラエティに富んでいます。

本当のワキガ体質者は、
①耳垢が柔らかい。
②ワキ毛が比較的濃い。
外耳道の毛も比較的濃い。
③下着が黄染する。
④遺伝傾向がある。

といった明らかな傾向があります。

医者の立場からみれば、
本当のワキガ体質者は非常に治療しやすく、
精神的にも楽なものです。

なぜなら、外科的療法によって、
完全に治癒させることができるからです。

ニオイが強ければそれだけいっそう、
術前と術後の変化が大きく、
患者さんもニオイの消失が自覚的に認識でき、
喜びも大きく、医師、患者の双方とも
手術の結果に満足できるものです。

ところが、自分だけで思い込んでいる、
いわゆる「自己臭恐怖」や「自己臭病」の
患者さんに外科手術を施した場合は、
後日決まって「まだにおうような気がします」
と再来院されるケースが多いのです。

こういう人には、何度手術を施したところで
ムダです。

今までワキガの手術を受けた人の中には、
この自己臭恐怖の患者さんが多く含まれて
いたのではないかと思います。

一般にこのような患者さんは、
思春期から長年長見続けたあげく
「手術で治そう」と一大決心をした上で
来院されるため、医師が、
「ぜんぜんにおいませんよ」
「気のせいですよ」
といった説得をしても、
逆に「自分をなぐさめている」と思い込むことが
あります。

時には、意を決してきたのに何の解決を
得られなかった、とさらにいっそう、
体臭に神経を集中させ、病状の悪化を
見ることもあります。

■試験切開で患者さんも納得

ムダな手術を避けて、
患者さんが自己臭病であることを自覚するには
どうしたらいいのでしょう。

自分だけで思い込んでいる軽い体臭の患者
さんには「試験切開」という方法をとることも
あります。

ワキガの原因は、腋窩皮下のアポクリン腺や
皮脂腺が異常に多いことにあります。
このことをよく説明した上で、
局所麻酔をし、腋窩の皮膚をシワに沿って
約5ミリ程度切開を加えて、
火かのアポクリン腺量を調べます。

そして本人にも確認してもらいます。

実際に手術で摘出したワキガの患者さんの
アポクリン腺の量と比較することで、
アポクリン腺が少なく、
ワキガではないことを自覚してもらうように
します。

言葉では十分説得できなくても、
このような確実な証拠を見せられると、
患者さんも意外と納得するものです。

■神経症としての自己臭症・多汗症

思い込みで自分の体臭を気にしている患者
さんは、試験切開で容易に納得し、
悩みも解消してしまうものですが、
神経症としての自己臭恐怖の患者さんには、
様々な精神療法が必要となることもあります。

実は、神経症としての自己臭恐怖は、
赤面恐怖と同様に、精神病理学的に
「対人恐怖」として分類されるもので、
日本では、森田学派を中心として盛んに
研究されてきました。

多少専門的になりますが、簡単に言えば、
対人恐怖の発生は、
他の神経症の発生と同様に、
ヒポコンドリ性基調という神経症になりやすい
正確がベースとなって、
何かの契機で精神交互作用という悪循環に
陥り、症状が固着し、
神経症に至るというものです。

多汗恐怖を例にあげてみましょう。

もともと内向的で多感な性格の男性が、
手掌多汗を訴えて来院しました。

その契機は、中学生の時のフォークダンスで、
日ごろ行為を抱いていた女性と踊った際、
緊張感から手に異常に汗をかいてしまい、
恥ずかしい思いをしたことでした。

それ以降自分の手掌の感覚に鋭敏となり、
汗をかくまいとすればするほど手掌を強く
意識するようになってしまった、といいます。

意識しだすと、ちょっとした温度の変化や、
緊張したときなどでも、
すぐに手掌に汗をかいてしまうという悪循環に
陥り、次第に悩みが深くなり、
神経症症状が出るまでになってしまったのです。

■神経症になりやすい性格

神経症としての自己臭恐怖や手掌多汗症の
患者さんに共通する性格があるので、
それをみてみましょう。

まず診察して、一見してわかる特徴は、
目線です。

医師の目をじっと見て話しをするといったことは
少なく、目を伏せがちで、小声で訴えます。

内気で内向的性格というのが第一印象です。

さらに話を聞いていくと、
単に内向的なだけではなく、
負けず嫌いの完璧主義で、努力家で、
非常に強い向上発展欲を兼ね備えている
といった、アンビバレンツな性格をしている
ことがわかります。

そのうえ、強い執着傾向があるために、
たえず自分に注意や関心が向きやすく、
ひとつの問題が意識されると、
それが解消するまでは注意が他に向かない
状態になりやすいことも特徴です。

精神療法を行う際に、我々治療者は、
以上のような患者さんの複雑な性格傾向を
十分考慮して接しなければならない、
と考えます。

たとえば、ただの親切心から、
「あなたはにおうと言うけれど、
ちっともにおわないですよ」
「要するに気にし過ぎですね」
「クヨクヨしないで頑張りなさい」
といった単純な説得では、
「自分の悩みが全然わかってもらえない」
と怒りを掻き立てるだけで終わってしまいます。

治療行為とは、医師と患者の協同作業です。

根気よい面接による相互の信頼関係の
上に立って、
初めて解決の糸口がつかめることを、
我々治療者は肝に銘じ、
患者さんの前に立つべきだと思います。
■精神分析的精神療法

正当な精神分析療法とは、
週に何回かの面接の際、
自由連想法というやり方で、
患者さんの想起する話の内容や
その時の態度や振る舞い、
さらには、治療者に対する感情などを
手がかりとして、
患者さんの心の奥に潜む無意識を探っていき、
それまで気が付かなかった心の奥底の衝動や
願望を意識化させ、
それにより閉じ込められていた無意識の檻から
脱して、病気から解放させる、というものです。

しかし、外来における、自己臭症、多汗恐怖への
正統な精神分析療法の応用は、
多大な時間を必要とすることと、
患者側の治療意欲と協力が必要なことなどで、
実際には困難なことが多いのです。

それでも、精神分析的手技は、
患者さんの過去の生活史や自己臭恐怖の
契機となった無意識の動機、
対人・対社会関係などを明確化してあげる
ことによって、
自己像をより客観的に判断する能力や
セルフコントロールの能力をつけさせる
ことにもなります。

他の精神療法や薬物療法の補助療法として
有効性があります。

また、患者さんの話や、訴えを真剣に時間を
かけて聞いてあげるということは、
医療の原点です。

その意味では精神分析的な精神療法は、
ぜひ必要です。

■ロゴセラピー

人間の単純な心理的原理を応用する
ロゴセラピーは、外来での自己臭症の
治療としては、簡単かつ有効なものです。

人間の単純な心理的原理とは、
いわば「逆転の発想」とでもいえるでしょう。

「逃げれば追いかけられる、
追いかければ逃げる」、
すなわち「逃避する態度はかえって怖れる
ものを出現させる」という原理を逆に応用
するのです。

実際に、夜眠ろうとするとますます眠れなくなり、
それなら朝まで起きていようと開き直った瞬間に
眠ってしまった、という経験をみなさんもしたことが
あるでしょう。

その原理の応用です。

これを「開き直り療法」と呼ばれていますが、
恐怖するものに、
意識的に開き直って逆に志向することによって、
逆説的に恐怖する病状を軽減させようと
するものです。

ここで、多汗恐怖の患者さんにロゴセラピーの
生みの親、ヴィクトール・フランクルが使った
言葉を紹介しましょう。
「昨日はまだ1リットルしか汗をかいていない。
それでは今日はひとつ10リットルばかり
発汗してやろう」
このような開き直った態度とユーモアで、
自ら自分の症状を調整すれば、
おのずと症状との距離がとれてくるものです。

逆転の発想は確かに有効ですが、
そのような発想自体が、
意識を症状に向けてしまうことにもなるため、
執着性の強い患者さんでは、
開き直り療法の効果が得られない場合も
ままあります。

このような患者さんには、
過大な事故への意識の集中を他に
むけさせることが必要になってきます。

すなわち、自己観察の離脱が必要となるのです。

たとえば「あなたは自分の体がにおうと言って
います。

それでは、あなたのまわりで、
あなたがにおうと感じる人はどのくらい
いましたか」といった具合です。

そして、最終的には「本来人間は、
自分の姿形の美しさや、
体臭の強弱や、汗の多少でその人の
存在意識が評価されるものではなく、
もっと他に人生の意味や価値があるのでは
ないか」といった実存的な説得を加えることも
需要なことです。

ロゴセラピーは、森田療法、精神分析、
行動療法などと違い、たった1回の面接で
治癒することもあります。

ただ単に患者さんの症状や悩みを解消させる
だけでなく、
これからの患者さんの生き方に新しい道を
拓く可能性を示唆する意味でも、
自己臭恐怖や多汗恐怖の治療だけではなく、
あらゆる医療場面で応用できるものと思われ
ます。

■系統的脱感作法

系統的脱感作法という治療法は、
特に手掌多汗症に顕著な効果が認め
られます。

この治療法は、ある刺激場面で緊張反応を
示すとき、
この緊張反応とは相いれないような、
逆にリラックスするような反応が生起されると、
患者さんの緊張反応は制止されるというもの
です。

簡単にいえば、
訓練によって意図的に自分の自律神経を
コントロールできる方法を身につけさせるという
ものです。

自律訓練法は、元来、自己催眠法から発展
したもので、
現在では様々な方法が開発されています。

一般的には、病院でおおよその練習法を
体得し、
あとは自宅で朝夜の1日2回ほど行うことが
多いようです。

自律訓練法は、患者に体得の意志さえあれば
誰でも技術を習得でき、
治療への応用としてのみならず、
日常生活でのストレス解消、
心身の健康増進といった意味で、
積極的に取り入れて良い方法だと思います。

さて、こうして自立訓練法によって弛緩反応が
十分得られたなら、
いよいよ系統的脱感作法に移るわけですが、
その前に「不安階層表」といったものを
作成します。

これは、患者が過去に緊張反応を示した
刺激場面を、
面接や心理テストなどで調べ、
その刺激度を小さな方から順に大きい方へと
並べます。

つまり、過去に手掌に発汗した様々な場面を
10場面選抜し、
発汗の少ない方から多い方まで順次並べる
のです。

たとえば、
①自分の部屋で、1人でテレビを見ている
②自分の部屋で、1人でゲームをしている
③自分の家で、家族と話をしている
④冬、戸外から暖かい教室に入っていく
⑤梅雨時、ムシムシする電車の中にいる
⑥試験中
⑦会社の職場面接を受ける
⑧日ごろ好意をもっている異性と話をする
⑨会社でみんなの前で発表する
⑩同僚から、手に汗をかいていることを
指摘される

以上のような不安階層表が作成されたなら、
患者さんは緊張度の低い①の場面から
そのイメージを思い浮かべます。

そして、イメージすることによって、
緊張反応が生起できたなら、
患者さんはただちに自立訓練法で体得した
弛緩反応で、
緊張反応を逆制止させます。

1つの場面に対して、
逆制止によって緊張がなくなったから、
不安階層表に従って、
次の場面における緊張を逆制止させていきます。

このようにして、最後の緊張場面でも緊張が
なくなるまで逆制止を行っていきます。

こうしたやり方を脱感作といい、
系統的に順次行うため、
個の療法を系統的脱感作法といい、
さらにこれらを療法をまとめて、
行動療法と呼んでいます。

これらの行動療法は、自立訓練にせよ、
脱感作にせよ、治療者と患者双方に時間と
根気が必要ですが、
この方法は精神安定剤などの薬物を
使用せずにかなりの治療効果が得られるので、
応用する価値があります。

■自己臭妄想の治療法

経験上、多汗恐怖、特に手掌多汗症の患者
さんのほとんどは軽症の心身症程度のもので、
今まで述べてきた治療法で十分対応できる
ものです。

しかし、自己臭症の患者さんの中には、
時に、重症の神経症や統合失調症に近い
患者さんも含まれています。

このような重症の患者さんの自己臭恐怖は、
むしろ「自己臭妄想」と呼ぶべきでしょう。

自己臭妄想の患者さんは、
しばしば次のような訴えをします。

「自分の体臭が他人ににおっているのは
事実だ。

その証拠に、他人が「ニオイ」とか「出て行って
くれ」とかいったり、
自分が入っていくとみなが窓を開けたり、
席を立ったりする」

このような訴えを分析すれば、患者さんが、
実際ににおっているのではなく、
他人が自分を忌避する行動をとるから、
確実に自分はにおっているのだと確信
しているにすぎないことが多いのです。

他人が席を立ったり、窓を開けたりといった
ことは、実際にしばしばあることです。

第三者から見れば、偶然的なことで、
患者さんにはまったく無関係な出来事に
すぎないのですが、
本人は決してそうは受け取らずに、
自分と関係づけてしまうのです。

精神医学ではこれを関係妄想と呼び、
しばしば統合失調症の思考に出現する
症状なのです。

統合失調症の患者さんは、
往々にして自己臭妄想だけでなく、
幻聴のような知覚の障害や、
他の被害的・誇大的妄想などを訴える
こともあり、診断の参考になります。

時に、ひそめ眉、とがり口、空笑いなどの
表情や態度が出ることもあるので、
それらにも注意しなければなりません。

このような、重症の神経症や統合失調症の
患者さんの治療は当然、
向精神薬の投与が最初に行う治療法となり、
前述の精神療法のみの対応では不十分な
ことが多いのです。

また時には、精神科の病院に入院した上での
治療が必要となることもあります。

ここで、最も大切なことは、治療者側に、
特に形成外科医に、最低、統合失調症か
否かを判定できるだけの医学的知識があること
です。

統合失調症の患者さんに対し、
患者側の訴えに従って安易に手術療法を
行うことは絶対に避けるべきでしょう。

手術を行ったとしても、
患者さんの自己臭妄想は決して解消されず、
手術の繰り返しを招くことにもなり、
時として、症状の悪化や発症の契機となる
危険性もあるので、十分な注意が必要です。

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